フェニックス

世界にたった一羽しか存在していないとされる伝説の鳥。フェニックスという名は、ギリシャ語の深紅の鳥という意味の「ポイニクス」からきており、日本では不死鳥、または火の鳥と訳される。幸運を運んでくる鳥として、昔から世界中の人々にあがめられている。また、飛ぶ姿を目撃すると幸せになれるとか、フェニックスの灰を飲むと、不死の力を得られるとか、何かと人間にとっては縁起の良い鳥である。大きさは鷲ほどで、寿命は五百年以上もあり、太陽の熱をエサとし、アラビアを生息地としているという。寿命が近づくと、自ら火の中に飛び込んで焼け死に、その灰の中から、ふたたび新しいフェニックスを誕生させるという。灰からは、一羽のフェニックスしか誕生しないため、生きているフェニックスは、世界に一羽しか存在しないとされている。

フェニックスの死と誕生にまつわる説には他にもあって、死ぬときは香りの良い枝を集めて巣を作り、そこに横たわって静かに死に、やがてその死骸にわいたウジ虫が成長し、それが新たなフェニックスになるのだという説や、アラビアで死んだフェニックスの死骸から生まれた新たなフェニックスが、その死骸を、古代エジプトの都市へリオポリスがあった地へ運ぶという説などがある。

フランケンシュタインの怪物

イギリスの作家、メアリー・シェリーによって1818年に発表された小説に登場する人造人間。天才青年科学者、ヴィクター・フランケンシュタインが、いくつもの死体の中から新鮮な部分をつぎはぎにして、新たな生命を吹き込んで造り出した。強靭な肉体と、優しい心を持った人造人間として誕生したにもかかわらず、あまりにも醜い姿をしていたため、人間たちから凶暴な怪物と見なされてしまった。やがて、自分を造り出したフランケンシュタインを憎むようになって、本物の凶暴な怪物と化してしまう。

チェシャ猫

イギリスの作家、ルイス・キャロルによって1865年に発表された小説「ふしぎの国のアリス」に登場する猫。木の枝に座っていて、いつもニヤニヤ笑っている。姿を消したり、体の大きさを自由に変えることができる。消える時はゆっくりと消えるため、ニヤニヤ笑いだけがその場に残る。見た目はぶきみだが、人間に危害は加えない。

この不思議な猫の名前は、イギリスのチェシャー地方に由来しているらしい。かつてチェシャー地方は、他の地方より飼い猫が笑うほど人々の生活が豊で、そこで作られていたチーズが、猫の形をしていたから、と言われている。

吸血鬼ドラキュラ

人間の生き血を吸う魔物として、昔から恐れられている吸血鬼ドラキュラは、夜になると人里をさまよい、手頃な人間にねらいを定めて首すじにかみつき、その生き血を吸う。生き血を吸われた人間は、やがて原因不明の病気にかかって死んでしまう。しかし、やっかいなのはその後で、ドラキュラによって血を吸われた人間は、死んでからしばらくすると吸血鬼として復活し、ドラキュラと同じように、人間の生き血をもとめて闇をさまよい歩く。そうやって、吸血鬼は次々と増えていく。うっかりすると、世界中が吸血鬼だらけになってしまいかねない。さらに、ドラキュラには霧に姿を変える能力があって、どんなに用心していても、わずかなすき間から人の家に入りこんでしまう。ニンニクや清められた水、十字架、塩、バラの花などを家の入り口に置いておく、という防御方法が知られているが、一時的な効果しかない。一旦狙われたら、ドラキュラから身を守るのは、かなり難しい。

ドラキュラは、ルーマニアのトランシルバニア地方にある、古い城に棲んでいる。そこで何百年もの間、人間の生き血を吸い続けている。血を吸うたびに若返るので、年をとることも、力が衰えることもない。こんなきわめて危険な魔物は、一刻も早く退治しておかなければならないところだが、どんなに強力な武器を使って退治したつもりでも、ドラキュラはすぐに復活してしまう。退治するには、たった一つの方法しかない。ドラキュラは夜明けから日没までの間は、暗い地下室の棺の中で眠っている。その時、木や鉄でできた杭を体に打ちこみ、すばやく首を切り落とし、太陽の光にさらす。すると、ドラキュラの体は灰となって消滅する。

ユニコーン

頭に細長い一本の角がはえた白い馬の姿をした聖獣で、日本では一角獣とも呼ばれる。ユニコーンの角には、どんな病気をも直し、どんな毒をも中和させる不思議な力があると信じられているため、昔から、その角を狙ってユニコーンを探し求める人間が後を絶たなかった。しかし、ユニコーンは警戒心が強く、滅多に人間の前に姿を現すことはない。角の効力で一儲けしようと企む人間たちには、その気配さえ感じさせない。唯一、処女だけには心を許して姿を現し、その膝の上で眠ることがあるという。

セルキー

イギリス、グレートブリテン島の北東に浮かぶオークニー諸島や、シェットランド諸島週辺の海底に棲むアザラシの妖精。水中を移動する時はアザラシの姿だが、海底で生活している時や、陸に上がる時は人間と同じ姿をしていると言われている。

元々は天使だったが、天国から追放されて妖精になったとか、罪を犯した人間が罰を受けてアザラシになり、陸に上がる時だけは人間に戻ることを許されたもの、という説がある。また、女のセルキーが陸に上がるときは、アザラシの皮をぬいで美しい娘の姿になったり、男のセルキーは、マーマンと同じように嵐を引き起こし、船をひっくりかえすことがあるので、人魚の仲間ではないかという説もある。

不思議の国の住民たち 2