レプラホーン

アイルランドの妖精で、地下のすみかで一人暮らしをしている。地域によってはレプラコーンとも呼ばれ、奇妙な三角の帽子を斜めにかぶり、部屋にこもって、妖精たちのために靴を作り続けている。特に踊り好きの妖精たちからは、レプラホーンの作る靴は大変重宝されている。

レプラホーンが作業をしている時は、ハンマーでたたく音が地上にももれるため、人間がその場所を見つけ出すのは容易だという。また、地下に隠された財宝のありかを知っているといわれ、しばしば、宝探しをしている人間によって捕まえられ、財宝のありかを白状させられることもあるという。しかし、人の気をそらせることが上手く、わずかなスキをついて姿を消してしまうため、結局は財宝を手にした人間はいないらしい。

クルーラホーン

小さな老人の姿をしたアイルランドの妖精。地域によっては、クルーラコーンとも呼ばれている。食料を蓄えておくための部屋や、地下の酒蔵などに住み着いている。

レプラホーンの仲間とされているが、妖精たちの靴を作り続けている働き者のレプラホーンと違い、クルーラホーンは大の酒好きで、住み着いた家の酒をこっそりいただき、ほとんど毎日のように酔っぱらっている。時には家の主人の目を盗み、その家で雇われている召使いたちといっしょになって酒を飲むこともあるいっぽうで、酒を盗み出そうとする召使いを、追っ払ってしまうこともある。 酔いが過ぎると、ペットや家畜の背にのって大さわぎすることもあるが、そんな後は少しは反省するようで、後日、食料室や酒蔵のそうじをすることもある。家の者になついているというわけではないのに、家の者が引っ越しをすると、クルーラホーンは酒樽の中に隠れ、一緒に引っ越しをする。

ゴブリン

ヨーロッバでは、人間にとって悪い妖精たちのことをゴブリンと呼んでいる。いろんな姿のゴブリンがいるが、大半は小柄で醜い姿をしている。性格も皆だいたい同じで、ずる賢くって短気、さらに、飽きっぽい上にひがみっぽいから、ほかの妖精たちからも嫌われている。人間を襲ったり命を奪うことはしないが、人間を不幸にすることは大好きなので、いろんな悪知恵をひねり出しては悪さを企み、目当ての人間を陥れようと、常に機会を伺っている。そのくせ、ゴブリンたちの悪巧みといったら、小さないたずらばかり。たとえば、人の寝静まった民家で、物を壊したり足音をたてて騒いだり、笑うと果物が木から落ちたり、ミルクが腐ったりする術を使って人を困らせる。ゴブリンのほとんどは、馬小屋や洞穴などの暗い所をねぐらにしているが、同じ場所にずっと棲み続けることはしない。一人の人間を陥れたら、すぐにまた違う人間をターゲットにしたがるから、陥れる人間を求めてあっちこっち移動している。

ゴブリンの名前が付いてても、まったく別の種類のものたちがいる。ボブゴブリンは、ゴブリンとは性格が正反対で、上半身が人間、下半身が山羊の姿をしたおとなしい妖精。ボブゴブリンたちは、ミルク一杯を与えてもらうだけで、いろんな手伝いをしてくれる。ただし、人間たちにいじめられると、そのお返しにちょっとしたいたずらをすることもある。

ボーグル

イングランドやスコットランドに棲む妖精。ゴブリンの仲間とされているが、ゴブリンほど悪い妖精ではない。悪い人間だけに害を加える妖精。だから、ゴブリンの仲間ではなく、ボブゴブリンの仲間だとする説もある。人間の生活にとても興味をもっていて、めったに開けられない戸棚や宝箱の中に隠れて、いつもこっそりとのぞいている。ボーグルは幽霊のような妖精で、姿は目に見えていても、実際には実体がなく、骨も血も肉も付いていない。だから、武器を使って退治しようとしても、ポーグルには効かない。

ドワーフ

ドイツ、スイス、スカンジナビアなどの山地に棲む妖精。地域によっては、ドヴェルグ、ツヴェルクなどと呼ばれている。身長は1メートル前後で、男のドワーフも女のドワーフも毛深く、どちらも長いあごひげを生やしている。男のドワーフは老人のような顔をしているが、体はとても丈夫で力持ち。男女とも寿命は 200歳以上もある。ドワーフたちは太陽の光を嫌い、地下に穴をほって都市をつくり生活している。太陽の光をあびると、ドワーフは石になってしまうから地下で生活するのだという説もある。暗闇でも眼が利くため、一日の大半を地下で過ごす。鍛冶や石工が得意な妖精で、地下の作業場で精巧な道具を毎日作り続けていてる。出来上がった物に魔力を入れ込み、最終的に不思議な力を持つ武器や民芸品として完成させる。働き者の妖精ではあるが、敵対する妖精や怪物が近づくと、戦士となって戦う。また、ドワーフたちの縄張りに生息している動物たちを守っているとも言われていて、勝手に狩りをした者には容赦なく厳しい罰を与えるという。

スプリガン

イングランドの古い城跡や、塚、古代の巨人たちが作ったとされる環状列石などの周辺に棲む妖精。自分で管理している宝物の埋蔵地近くに棲む場合もあるという。

スプリガンは妖精たちの中で最も醜くいとされ、性格はとても気むずかしいといわれている。 病気をもたらすこともある厄介な妖精だともいわれているが、大抵は人間を怖がらせることに満足し、必要以上に危害を加えることはめったにしないらしい。ただし、妖精たちをいじめる者や、自分の行きつけの場所を荒らす人間には、さまざまな悪さをして懲らしめるという。さらに、人間のこどもをさらったあと、かわりに自分のこどもを置いていったり、嵐を引き起こして畑をあらしたりもするらしい。

スプリガンは、もとの小さな体を、大きくふくらませることができるので、巨人の幽霊だともいわれている。

魔除けの植物

もしも、悪い妖精に遭遇したとしても、魔除けのアイテムを持っていれば、危険は避けられる。四つ葉のクローバーは、妖精のいたずらから身を守るといわれている。また、トネリコの枝や、小さなヒナギク、ナナカマドの赤い実なども、妖精たちの魔法をはねかえす力があるらしい。スプリガンやゴブリンが出没しそうな場所を訪れる際には、これらの植物を前もって身につけておくと良い。

ヨーロッパの妖精と怪物たち 2