ノーム

ヨーロッパやスカンジナビアなどに棲む小人で、人間の手に乗せることができるほど小さい。寿命は400歳と、とても長い。男のノームは長いあごひげを生やしているが、女のノームも、300歳を越えたあたりから、ひげが生えてくるらしい。

ノームたちは、地下に穴をほって家をつくり、赤いとんがり帽子をかぶって、家族で生活している。地域によっては、地下の宝物を守っているともいわれている。頭がよくて、はたらきものだが、他の妖精たちとは関わりを持とうとはせず、ノーム族だけで静かに暮らすことを望んでいる。しかし、たびたび、トロールから一方的に嫌がらせを受けることがあるため、トロールが近くに現れたら、臨戦態勢をとって警戒する。

ヨーロッパでは、昔からたくさんの妖怪たちが目撃されていて、とくに、妖怪の一種である妖精たちの目撃例は、数えきれないほど報告されている。妖精とは、森や川や草花など、自然のものにやどってる精霊たちのことで、その種類はとても多いが、性格は大きく分けて、いたずら好きの悪い妖精と、おとなしくてやさしい良い妖精の二つに分かれる。悪い妖精は、小さないたずらをするものがほとんどだが、人を殺したり、おおケガを負わせるやつらもいる。良い妖精は、ふだんは、ほとんど姿を見せずに静かにくらしているが、ときどき、人間たちの手伝いをすることもあるらしい。

ヨーロッパの妖精と怪物たち 1

シーオーク

アイルランドでは、妖精のことをシー、またはシーオークと呼ぶ。イラストの妖精は、一般的なシーオーク。イバラの茂みなどに棲んでおり、人間の手のひらに軽々と乗せられるほど小さい。蝶やトンボのような羽を持ち、踊るように宙を舞う。小さなシーオークたちは、人間に危害を加えるようなことはほとんどないが、まれに、近づいて来た人間を、クノックと呼ばれる妖精たちの国に引きずり込むことがあるという。クノックは、人間が滅多に立ち入ることのない神聖な場所の地下にあって、シーオークたちは満月の夜になると、そこに集まり、一晩中踊り続けるという。クノックの入り口は、普段は人間の目に見えないが、満月の夜、クノックのある場所を三回巡ると、入り口が現れ、中で踊るシーオークたちの姿を見ることができるといわれている。

ピクシー

イングランド南西地域の、いろんな場所にあらわれる妖精。旅人を迷子にするいたずらが大好きだが、気に入った人間は手助けをする。服、特に緑色の服をプレゼントされると、大変喜ぶらしい。ふだんは手のひらに乗るほど小さいが、人間くらいの大きさにもなれる。踊り好きで、夜中に仲間と集まって踊ったりする。

ピクシーは、ときどき、ハリネズミの姿であらわれるので、ハリネズミという意味の方言で、アーチンとも呼ばれている。イラストでピクシーたちが踊っている場所は妖精の環と呼ばれるもの。妖精たちが夜に集まっておどったあとに生えてくるキノコの環には、ふしぎな力があって、満月の夜に環の中に入って願い事をすると、叶うといわれている。しかし、悪い人間が環の中に入ると、妖精の国へひきずりこまれ、罰をうけるという。この妖精の環と同じ力を持つ輪を、ピクシーは作り出すことができる。夜中に盗み出した馬に乗ってぐるぐると回り、ガリトラップとよばれる輪を作り出すのだ。ガリトラップは、その輪の中に人間が足を踏み入れると、必ず捕まってしまう。ピクシーに気に入られた人間なら脱出できるが、悪い人間ならば、助かる可能性はほとんどないという。

トロール

北欧の国々の森や古い塚などの地下に棲む妖精。みにくい姿をしているが、いろんな動物や美しい人間に変身することができるため、人間の住む場所へ、容易に入り込むことができる。大半のトロールは、くいしんぼうで力持ちのくせに、カミナリをとっても怖がる臆病な性格だが、中には、違う性格や能力をもつトロールも存在する。他の妖精たちへ執拗にいたずらを繰り返す、ひねくれもののトロールもいれば、おとなしくて優しいトロールもいる。また、太陽の光を浴びると、石になってしまう夜行性のトロールもいる。

ブラウニー

スコットランドやイングランドにあらわれる妖精。身長は60~90センチほどで、汚い服を着ていて、みにくい顔をしているが、人間に危害を加えるようなことはしない。

人の家に住みつき、その家の洗濯や掃除などの残り仕事をよろこんでする。お礼として家の片隅に、質のよい牛乳とクリーム、大麦で作ったバノックという堅パンを置いておくと、次の日も手伝ってくれる。ただし、お礼を忘れたりすると、機嫌が悪くなって、夜中にその家の人間の体をつねったり、部屋の中をわざと散らかしたりする。ブラウニーの呼び名は地域によって、ブカ、フェノゼリー、ボダッハなどと呼ばれている。

ジミー・スクウェアフット

イギリス(グレートブリテン島)とアイルランドの間のアイリッシュ海に、マン島という小さな島が浮かんでいる。そこは、他所にはみられない、多種多用な妖精伝説に満ちあふれ、今でも様々な妖精たちが棲んでいるという。このジミー・スクウェアフットもその一つ。マン島だけに棲む妖精といわれている。

かつて、マン島にはフォールと呼ばれる巨人たちが棲んでいたという。ジミー・スクウェアフットは、その巨人たちに乗りものとして飼われていた家畜の、後の姿だといわれていてる。家畜として飼われていた頃は大きなブタの姿をしていたが、やがて巨人にすてられ、さまよい歩いているうちに、人間のように二本足で歩くようになり、今の姿になったという。イノシシのような大きな牙を持っているため、しばしば、人食いの怪物と間違われることがあるが、人間には無害の妖精であるらしい。