1978年にリリースされたボストンのセカンド・アルバム。

長年にわたってこのアルバムは聞き続けている。

まるで、聖歌隊がパイプオルガンでロックを演奏しているかのようなサウンドとコーラス、かつ、素晴らしいメロディラインを伸びやかなリード・ヴォーカルで辿っていて、何度聞いても飽きない、実に見事な音楽に仕上げている。

全曲素晴らしいが、タイトル曲の一曲目から三曲目の

「イッツ・イージー」までの流れと、バラードの

「ア・マン・アイル・ネバー・ビー」が特に素晴らしい。

ボストンのサウンドは、トム・シュルツによって1976年リリースのファースト・アルバム「幻想飛行」で確立した。ブラッド・デルプによるリード・ヴォーカルとコーラスを除くほぼ全てのパーツを、トム・シュルツ自身が演奏し、その音源を何重も積み重ね、重厚なサウンドをたった一人で作り上げた。

こつこつと一人で録音するという職人気質な音作りは、E.L.O.のジェフ・リンに似ているが、彼とトム・シュルツが決定的に違うところは、同じ時期にジェフ・リンがシンセサイザーを多用していたのに対して、トム・シュルツは、シンセサイザーはいっさい使用していないということ。この究極の手作りサウンドは、今では伝説として語られている。

トム・シュルツの神業的な作業で完成した「幻想飛行」は、たちまち大ヒットとなり、急遽、ライブ活動のためのメンバーが集められることになった。つまり、ボストンはデビュー・アルバム発表後にバンドを結成したことになる。

ツアー中、レコード会社の圧力もあり、早急にセカンド・アルバムを作らなければならなくなったシュルツは、「幻想飛行」の時のような時間がかけられなかったため、各パーツのレコーディングは、それぞれ、バンドのメンバーが演奏することになったものの、細部にわたってメンバーに指示を出し、「ドント・ルック・バック」を完成させた。もちろん、このアルバムも大ヒットとなった。

ちなみにジャケットのイラストは前作からの連作になっていて、

ギター型の宇宙船が水晶の惑星に着陸する様子が

見開きで描かれている。そのため、日本でのLP発売時は

「新惑星着陸」という邦題がつけられていた。

ファーストアルバム「幻想飛行」のジャケットは、宇宙船が地球から宇宙へ飛び出す様子が描かれているが、こちらのタイトルは今でもそのままである。