とある場所で鹿を見た。背中にカラスが乗っていた。
                鹿はカラスに気がついているのかいないのか、
                定かではなかったが、体を揺するような仕草は見せず、
                静かに草を食んでいた。
                
                カラスは鹿のことをからかっているのかいないのか、
                定かではなかったが、鹿が動くたびにバランスを保ち、
                意地でも背中から動くまい、と決めているように見えた。なんだか面白い展開になりそうなので、しばらく様子を見ることにした。
                
                十分経った。鹿は相変わらず知らん顔で草を食み、
                カラスも鹿の背からまったく降りようとしなかった。
                状況は変わらず、
                結局私のほうがしびれを切らしてその場をあとにした。