ミルクセーキ 長崎名物その一
ミルクセーキ 長崎名物その一
猛暑日がいっこうに途切れないような日々は、ミルクセーキを食べながら、ひんやり気分で好きな映画でも観賞したい。
「夏の懐かしいものっていったら、やっぱ、ミルクセーキ
だよなあ」
いつだったか、関東出身の知人に、こう言ったことがある。そしたら、意外な言葉が返ってきた。
「ミルクセーキ? なんで?」
「そうだよなあ」なんて感じで共感してくれるものと思っていた私は、面食らってしまった。
なんでって…なんで?
訳を聞いてみたら、私の言っているミルクセーキと、知人のミルクセーキはまったく違う物だということが分かった。というより、私が懐かしんでいたミルクセーキは、実は、長崎特有のもので、他県から見ればとても異質なものだってことがこの時初めて分かって、愕然としてしまった。
ミルクセーキといったら、牛乳、卵、砂糖をミキサーなどでかき混ぜて作る飲み物。だけど、私の出身地の人間、長崎県民がこのミルクセーキの作り方を聞いたら大混乱に陥ってしまう。
長崎のミルクセーキは、卵と砂糖、それに練乳を混ぜて、削りたての氷にかけて食べる「かき氷」なのだ。
子供の頃、いちごのかき氷より、遥かに人気の高かったかき氷ミルクセーキ。夏の定番だった。当然、それが世間の常識だと思っていた…。高三の夏、海水浴場の監視のアルバイトをしていた時、海の家のおばさんから差し入れてもらったミルクセーキ…以来ずっと食べていない。
初めて、世間の常識のミルクセーキを飲んだ時、
「やっぱ、ミルクセーキはかき氷だよなあ」
と思った。
関東の知人は、まだ長崎のミルクセーキは食べていない。
もしも知人が食べたら、きっと病み付きになるに違いない。
長崎名物といったら、ちゃんぽん、カステラ、皿うどん。
だけど、かき氷版ミルクセーキも、隠れた長崎名物として推してあげたい。
それにしても、なぜ、長崎のミルクセーキだけが、
違うものになったんだろう…?
突出しエッセイ