厳窟の野獣
厳窟の野獣
1939年、ヒッチコックのイギリス時代最後の作品。
前年の「バルカン超特急」を撮った後、アメリカへ渡ることを決意したヒッチコックは、イギリスの映画会社と契約していた残りを消化するため、大急ぎで時代物の映画を撮った。それがこの映画。
スポーツで例えれば、消化試合のような映画だろうか。そのため、一部の評論家からは酷評されている。しかし、
それほど悪くはない。というより、私は結構面白い作品だと思う。
母親の死により孤独になってしまった若い女が、
叔母を頼って港町の宿屋を訪ねた。
しかしそこは、故意に船を難破させ、船員を皆殺しにして金品を
略奪する悪党たちの住処だった。
女は、悪党たちの新入りが仲間に殺されそうになるのを
寸前で助け出し、共に宿を脱出するが、
新入りの男にはある事実が隠されていた…といったストーリーで、ラストは意外な方向へ展開していく。
スリル、サスペンス、ロマンスと、
いろんな要素が詰め込まれていて、なかなか面白い。前半の、
悪党たちが大荒れの海岸で船を襲うシーンはセット撮影だが、
当時としては結構迫力があるし、
宿屋がいかにも不気味なデザインで、
これがまた実にいい雰囲気を出している。ただ、
クライマックスはもしかしたら「キング・コング(1933年)」の
影響を受けているのではないか、と感じてしまうところが
ちょっと気になったが、「裏窓」など、後の名作に繋がるシーンが見受けられ、ファンとしては大変見応えがある作品。
原題●Jamaica Inn
公開●1939年 (イギリス)
監督●アルフレッド・ヒッチコック
脚色●アルマ・レヴィル
台詞●シドニー・ジリアット
出演●チャールズ・ロートン
レズリー・バンクス
エミリン・ウィリアムス
関連映画
バルカン超特急
(1938年イギリス)
キング・コング
(1933年アメリカ)
裏窓
(1954年アメリカ)
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