死霊のはらわた
死霊のはらわた
「死霊のはらわた」は、日本ではアメリカよりだいぶ遅れて、
確か'84頃に公開されたホラー映画。
この映画を初めて見たのは、もう二十年以上も前なのに、その時のことを今でもよく覚えている。当時勤めていた会社の先輩と、残業が終わった後、オールナイトで上映していたこの映画を見に行った。まだまだスプラッター・ホラーなんて言葉が、一般に定着していなかった昔のこと。
この映画、本国アメリカで大ヒットしたということで、日本での公開前にテレビで散々、予告編が流れていた。
鎖で開かないようにした地下室の扉の隙間から、恐ろしい顔をした化け物が、扉をこじ開けようとして暴れ出す…といった、いかにもB級の臭いが漂っていた映像。
当時、一日の大半を会社で生活していて、ほとんどテレビを見ていなかったのに、食事中のテレビ解禁時間や、自宅での深夜のわずかな視聴時間に、何度もこの予告編を見せられた記憶がある。
そんなある日、終電の時間を過ぎていっしょに残業を片付けていた先輩が、オールナイトでこの映画を見に行こうと言い出した。
実はこの先輩、ガチガチのいわゆる文学青年で、好きな映画といったら、「ドクトル・ジバコ」とか「風と共に去りぬ」といった、大作ドラマ映画が好きで、B級の、しかもホラー映画なんて、絶対に見るような人ではなかった。何度も予告編がテレビで流れるものだから、なんか気になったらしいのだ。
じつは私も、今でこそB級もC級も、おバカ映画も何でも見るようになったのだが、当時は、この手のホラー映画は偏見があって、まったく見ていなかった。でも私もやっぱり予告編が気になっていたし、別に断る理由もなかったので快諾した。
どうせくだらない映画だろうけど、騙されたつもりで見てやろう。二人ともそんな心境で映画館に行った。
ところがどっこい、これがとても面白かった。
ホラー映画なのだから、当然、観客を怖がらせる映像がふんだんにあるわけだけど、出てくるぞっ! と分かってても、悔しいことに、しっかり驚かせられてしまった。二人とも同じシーンで、びっくりしすぎて、思わず前の座席を同時に蹴ってしまった。良い意味で、二人の予想を大きく裏切った映画だった。
そんな思い出があるこの映画、久しぶりに見た。
さすがに現在では、物凄い映像を見馴れているから、当時のように、びっくりさせられるようなことはなかったが、当時の状況を考えて改めて見ると、なかなかよく出来ている。しかも監督が20代前半の時に作った作品だというから凄い。監督は、今ではすっかり一流の仲間入りとなった、スパイダーマンシリーズのサム・ライミ。
サム・ライミ監督、この映画が日本でも大ヒットしたにもかかわらず、…というより、この映画がヒットしたからなのかもしれないが、その後の映画は、一部のカルト映画ファンにしか支持されず、長年に渡ってB級街道を突っ走ってきた監督。スパイダーマンの監督に抜擢されたと聞いて、大丈夫か? と、首をひねった映画ファンも多いに違いない。スパイダーマン、大ヒットして本当に良かった。
「死霊のはらわた」は、サム・ライミ監督の長篇デビュー作。
スパイダーマンの原点というわけではないが、当時の監督の、映画作りの情熱が感じられる、貴重な映画だと思う。
原題●The Evil Dead
公開●1981年 (アメリカ)
監督●サム・ライミ
脚本●サム・ライミ
出演●ブルース・キャンベル
エレン・サンドワイズ
ベッツィ・ベイカー
ハル・デルリッチ
映画感SHOW